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東京地方裁判所 昭和43年(ワ)12633号 判決 1969年8月29日

原告

有限会社山本材木店

外二名

代理人

中村了太

被告

千代田石油株式会社

外一名

代理人

田中登

二宮充子

主文

被告らは各自原告有限会社山本材木店に対し金五七一、二〇〇円、原告山本昭治に対し金一四三、七〇〇円、原告佐藤久夫に対し金九二、八〇〇円およびうち原告有限会社山本材木店に対し金四四六、二〇〇円に対する、原告山本昭治に対し金一三八、六〇〇円に対する、原告佐藤久夫に対し金八七、七〇〇円に対する昭和四三年一二月八日以降支払い済みに至るまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。

原告らの被告らに対するその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを三分し、その一を原告らの、その余を被告らの、各負担とする。

この判決は、原告ら勝訴の部分に限り、かりに執行することができる。

事実

第一、請求の趣旨

一、被告らは各自原告有限会社山本材木店(以下原告会社という)に対し七三八、三〇〇円、原告山本昭治(以下原告山本という)に対し三二三、七〇〇円、原告佐藤久夫(以下原告佐藤という)に対し一七二、八〇〇円およびこのうち原告会社に対して六一三、三〇〇円に対する、原告山本に対して三一八、六〇〇円に対する、原告佐藤に対して一六七、七〇〇円に対する昭和四三年一二月八日以降支払済みに至るまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。

二、訴訟費用は被告らの負担とする。

との判決および仮執行の宣言を求める。

第二、請求の趣旨に対する答弁

一、原告らの請求を棄却する。

二、訴訟費用は原告らの負担とする。

との判決ならびに原告勝訴の場合担保を条件とする仮執行免脱の宣言を求める。

第三、請求の原因

一、(事故の発生)

原告山本、同佐藤は、次の交通事故によつて傷害を受けた。

なお、この際原告会社はその所有に属する自動車を損壊された。

(一)  発生時 昭和四三年三月八日午前一一時二〇分頃

(二)  発生地 東京都調布市柴崎町六八番地先道路

(三)  加害車 ジユピター三九年式自動車(多摩一す二五七九号以下甲車という)

運転者 被告種子田健(被告種子田という)

(四)  被害車 マツダ四一年式自動車(多摩一な一二七七号以下乙車という)

運転者 原告佐藤

被害者 原告山本同乗中、原告佐藤

(五)  態様

乙車が右道路を立川方面から新宿方面に向い進行し、事故現場にさしかかつた際、原告佐藤が自車の前に自転車から荷物を落し拾おうとしていた男を発見し、一時停車をなしていたところ、後方から来た甲車が停車の措置をとつたが、ブレーキが故障していて停車できず乙車に追突した。

(六)  被害者原告山本、同佐藤の傷害の部位程度は、次のとおりである。

原告山本―頸椎捻挫により加療一〇〇日を要する傷害。

原告佐藤―頸椎捻挫により加療四七日を要する傷害。

二、(責任原因)

被告らは、それぞれ次の理由により、本件事故により生じた原告らの損害を賠償する責任がある。

(一)  被告千代田石油株式会社(被告会社という)は、加害車を所有し自己のために運行の用に供していたものであるから、自賠法三条による責任。

(二)  被告会社は、被告種子田を使用し、同人が同被告の業務を執行中、後記のような過失によつて本件事故を発生させたのであるから、民法七一五条一項による責任。

(三)  被告種子田は、事故発生につき、次のような過失があつたから、不法行為者として民法七〇九条の責任。

ブレーキの故障した甲車を運転した過失。

三、損害

(一)  原告会社の損害

1 原告会社所有の乙車の後部が破損したため昭和四三年三月九日有限会社ヒダカ産業に修理に出し六、三〇〇円の支払をした。

2 原告山本は原告会社の代表者であり、前記傷害のため昭和四三年三月八日以降同年六月一七日まで、原告佐藤は原告会社の従業員であり、同年三月八日以降四月二四日まで仕事をすることができなかつたが、両名は原告会社のため材木を仕入れに行く途中の事故であつたため原告会社は右の期間の給料の支払をなした。

原告山本の一ケ月分の給料は一五万円であるから、原告会社はそのため五〇万円、原告佐藤の一ケ月分の給料は三八、〇〇〇円であるから原告会社はそのため五七、〇〇〇円合計五五七、〇〇〇円の損害を蒙つた。

3 原告会社は、原告山本、同佐藤が平常通り仕事ができなくなつたため、昭和四三年三月八日から同年六月五日まで金井育男を使用し、同人に対しこの間の給料として六月五日一二五、〇〇〇円の支払をなした。

4 本訴提起のための弁護士着手金として五万円の支払をなし、同額の損害を蒙つた。

(二)  原告山本の損害

1 治療費

鈴木整形外科診療所(昭和四三年三月一六日精密検査)五、一〇〇円

昭島名倉堂(一〇〇日間通院治療)一八六、〇〇〇円

2 慰籍料

右治療期間経過後も約二ケ月間頭痛肩凝り等に悩まされた。慰籍料は二〇万円を下らない。

(三)  原告佐藤の損害

1 治療費

鈴木整形外科診療所(昭和四三年三月一六日精密検査)五、一〇〇円

昭島名倉堂(四七日間通院治療)一七、七〇〇円

2 慰籍料

右治療期間経過後も暫く頭痛肩凝り等に悩まされた。慰籍料は一五万円を下らない。

四、よつて、被告らに対し原告会社は七三八、三〇〇円、同山本は三二三、七〇〇円、同佐藤は一七二、八〇〇円およびこのうち原告会社に対し六一三、三〇〇円に対する、同山本に対し二一八、六〇〇円に対する、同佐藤に対し一六七、七〇〇円に対する訴状送達の日の翌日である昭和四三年一二月八日以降支払い済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第四、原告らの事実主張

一、(請求原因に対する認否)

第一項中(一)ないし(四)は認める。(五)の中甲車が乙車に追突したことは認めるがその余は否認する。(六)は知らない。

第二項(一)(二)は認める。(三)のうち被告種子田に過失のあることは認めるが、ブレーキの故障の点は否認。

第三項不知。

第四項争う。

第五、証拠関係<略>

理由

一請求原因第一項(一)ないし(四)、(五)のうち甲車が乙車に追突したことは当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、原告山本、同佐藤はいずれも本件事故により頸椎捻挫の傷害をうけ、原告会社所有の乙車が本件事故により破損されたことが認められる。

二請求原因第二項(一)(二)、(三)のうち被告種子田に過失のあつた点は当事者間に争いがない。従つて、被告会社は自賠法第三条、民法七一五条に基づき、同種子田は民法第七〇九条に基づき、原告らの次の損害を賠償すべき義務がある。

三(一)  原告会社の損害

1  <証拠>によれば、原告会社は乙車の修理費として六、三〇〇円支払つたことが認められる。

2 <証拠>によれば次の事実が認められる。

原告会社は材木の販売を目的とする有限会社で、本件事故当時原告山本が代表取締役であり、同佐藤が従業員であつたが、いずれも同様に材木をかついだり、自動車で運搬する仕事が通常の仕事であつた。

この他原告山本の妻が事務の仕事をしていたのみで他に従業員はいなかつた。

原告山本は本件事故により昭和四三年三月八日より同年六月一七日までの間約三八回にわたつて昭島名倉堂に通院し治療を受け、この間原告会社に出勤したが当初一ケ月半位はほとんど仕事をすることができず、その後も少しずつ仕事をしていたが、客との応待、電話に出る程度で、力仕事や自動車の運転はできなかつた。

原告佐藤は昭和四三年三月八日から同年四月二四日まで、約三五回にわたり昭島名倉堂に通院し治療をうけ、この間、原告会社へ出勤していたが、力仕事、自動車の運転はできず、客の応待等をしていた。

原告会社は右期間中事故前と同額の、原告山本に月一五万円、原告佐藤に一ケ月原告主張の三八、〇〇〇円を超える給料を支払つたことが認められる。

右認定事実によれば原告山本は二ケ月と一〇日間、原告佐藤は一ケ月半の間それぞれ通常の三割程度の労働しかなし得なかつたものと認められ、この間原告会社は両名に支給した五五七、〇〇〇円の七割である三八九、九〇〇円の損害を蒙つたものと認められる。

3  <証拠>によれば、原告会社は原告山本、同佐藤の治療期間中の昭和四三年六月五日までの間不足した労働を補うため訴外金井育男を使用し給料として一二五、〇〇〇円を支払つたことが認められる。

4  <証拠>によれば原告会社が本訴提起につき弁護士費用五万円を要したことが認められ、右は本件事故と相当因果関係が認められる。

(二)  原告山本の損害

1  <証拠>によれば、原告山本は本件事故による傷害の治療のため鈴木整形外科診療所に五、一〇〇円、昭島名倉堂に一八、六〇〇円、合計二三、七〇〇円を支払つたことが認められる。

2  前認定の諸事情に照らし原告山本の受くべき慰籍料は一二万円をもつて相当と認める。

(三)  原告佐藤の損害

1  <証拠>によれば、原告佐藤は本件事故による傷害の治療のため鈴木整形外科診療所に五、一〇〇円、昭島名倉堂に一七、七〇〇円、合計二二、八〇〇円を支払つたことが認められる。

2  前認定の諸事情に照らし原告佐藤の受くべき慰籍料は七万円を相当と認める。

四よつて、被告らに対する本訴請求のうち、原告会社の五七一、二〇〇円、原告山本の一四三、七〇〇円、原告佐藤の九二、八〇〇円およびうち原告会社に対し四四六、二〇〇日に対する、原告山本に対し一三八、六〇〇円に対する、原告佐藤に対し八七、七〇〇円に対するいずれも訴状送達の日の翌日であること記録上明らかな昭和四三年一二月八日から支払済みに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は正当として認容し、その余は失当として棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九一条第九二条、仮執行の宣言につき同法第一九六条を適用し、仮執行の免脱は相当でないので付さないこととし、主文のとおり判決する。(荒井真治)

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